残照

仕事をしていると、席の後ろの段ボールの隙間から 「カサコソカサコソカサコソ・・カリカリ・・カサコソ」 ((((;゜Д゜))) 奴か!?奴が来たのか!? しかも音にえらくパワーが。大物だ! 特化武器を用意しておかなかったの、後悔しながらも、 健気にはたきを装備して待ち構える影鈴。 ・・・カナブンでした。ほぅ。小学生の夏休み以来。 なんとも贅沢に鮮やかな緑色。 「なーんだ、カブトムシじゃないじゃん」的立ち位置の虫だったと記憶してるけど、 環境変化に弱くて、最近の都会ではむしろレアなのだとか。 餌はお仲間達と同じように樹液。 どこからどう迷い込んだのか知らないけれど、このまま部屋にいたのでは餓死あるのみ。 ひと夏を生きる儚い虫。既に相当弱っていてもおかしくなく。 というわけで、外に逃がしてあげようと、計算用紙に移し替えて・・・ えらく元気がなくて、簡単に捕まりました。 窓の外へ。 が、紙にへばりついて、全然動こうとしません。 むぅ。すでに9月。もぅ弱りきっているのかな。 外に出ても天敵に食べられちゃうのがオチなのかも。 「キミはどうしたいんだい?一緒にいて、安らかに時を待ちたいのかい?」 そう話しかけて、覗きこもうとした刹那、 ぱかっと前翅が開き、ふわっと後翅が光って、 気がついたらもう空高く木々の向こうへ。 残った夏をかき集めてお行き。